RecordSound

モーツァルトの教会ソナタは、コロレド大司教の時代に司教座聖堂の典礼に用いられたもので、これは古い伝統によったものであり、その性格も「世俗的」なものを感じさせはしない。ソリストはヴェルナーのバッハ録音等でもおなじみのエヴァ・ヘルダーリン。このLPで聴くポジティブ・オルガンの音色は宝石でも散らすかのように美しいし、豊かな残響を伴った録音も優れている。
グロリアとクレドにはさまれたミサの間にオルガンと一緒に演奏される短い器楽曲だが、第９番と12番以外の15曲を演奏している。二部のヴァイオリンと低音部のために書かれており、初期のものでは、オルガンは伝統的な数字付き通奏低音の演奏に限られていたが、モーツァルトの作曲家としての成長につれて、オルガンのパートも重要になってゆく。第17番のソナタなどはまったくピアノ・コンチェルトの第１楽章そのものであり、即興のカデンツァの指定までついているほどである。また３曲のソナタにおいては、オーケストラ部分の規模が大きくなっている。第16番には、オーボエ、ホルン、トランペットが２本ずつにティンパニがそれぞれ加わっている編成なので、『戴冠式ミサ』のためのソナタだと考えられている。