RecordSound

サヴァリッシュはバレエ録音が稀だけどこれが実に素晴らしい。ゆったりとゆとりのあるリズム、穏やかで劇的になりすぎないゆったりとしたテンポの運びの中で、オーケストラがこれ以上なくニュアンス豊かに鳴り響く。インテンポの音楽の運びはともすれば情感的に貧しいものになってしまいがちなのだが、この演奏が違う点は、オーケストラの歌い口にセンスが満ち満ちている点だろう。随所に用意された見せ場のソロは勿論のこと、裏方のちょっとしたフレーズにおいても手抜きがなく、隅々まで楽しめる。
但し、バイロイトやバイエルンでワーグナーのオペラをたくさん振っていた指揮者だと、念頭に置いて聴くのが良い。箇所によってはバレエ音楽にしては重厚と感じるところもありますが、ワーグナーなどのオペラを指揮した実績からサウンドにボリュームがあり緩急がはっきりしている。いわばドイツ系の構築的な、シンフォニック傾向の仕上がりになっている。好みや評価は人それぞれだとは思いますが、本場物とはいえ旧ソ連系オーケストラらしい金管のビブラートかけまくり、無節操ともいえる奏法とは違う、極めて丁寧に洗練された演奏。
最初こそ足取りが重く感じられますが、「バレエ」伴奏というより、ひとつの交響詩として聴こえてくると非常に聴き応えがあります。特にクライマックスの終結のスケールの大きさは説得力があり、オーケストラの歌いこみを聴きながら、サヴァリッシュの美しい指揮姿が目に浮かんできます。