パールマンの音色は、スピルバーグ監督の映画「シンドラーのリスト」(1993年)での希望と失望の混じった哀切きわまるヴァイオリン演奏が忘れられないでしょう。1945年8月31日生まれの74歳。初来日は1974年で、その後、度々来日している。4歳のときにポリオ(小児麻痺)にかかり、下半身が不自由になりますが、ヴァイオリニストになる夢をあきらめずに叶えた苦労人。車いすに乗った彼がステージに登場すると万雷の拍手が起こる。やがれ指揮者として指揮台に座ることが多くなっていったが、それでも体調が良ければ一節でもヴァイオリンを聴かせてくれるんじゃないかと、一筋の希望を胸にしながら演奏会を見守っている。演奏においてのみならず、教育者としても高く評価されているパールマン。LPレコードで彼の音色に陶酔していた頃の録音を再び手に取る機会がある度に、「シンドラーのリスト」以降の音色で再び聴きたい、と強く思う気持ちは年々強くなっています。
技巧を技巧と感じさせない抜群のテクニックで、難所もことなげにこなしています。ヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェンの作品にしては深刻なところが皆無で、晴朗、快活で詩情豊かな作品です。ティンパニの弱音の連打で始まりすぐに出てくる第1主題から伸びやかな感覚に包まれます。長いオーケストラの序奏は指揮者の腕の見せ所で、ここがうまく演奏されると、いやがうえにも期待が高まります。そして独奏ヴァイオリンがそっと出てきて、オーケストラと幸せな対話を繰り広げます。天性の明るさ、健康な精神の美なのです。パールマンの屈託のない明るく晴れやかな音は、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲にぴったりです。
彼がアシュケナージと組んだ瑞々しいベートーヴェンのソナタ集も手元で健在で。このベートーヴェン協奏曲の演奏も曲想こそ違え、仕上がりは共通。ジュリーニ&フィルハーモニア管の情緒的旋律重視のバックが、そのしっとり感を助長してひたすら甘く淀みない仕上がりになっています。本演奏は1980年録音でまだパールマンは30歳代半ばだから、もう少し冒険が欲しいと思ったものですが、ここ10年来はそれが味わいに転じました。パールマンの弾くそれぞれの協奏曲の演奏は、それぞれの協奏曲の王道を行く演奏と言えるようになりました。
録音:1980年9月14-15日ロンドン、アビー・ロード・スタジオ[デジタル]
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