シューマンのピアノ協奏曲はウルトラセブン最終話で、モロボシダンがアンヌに素性を告白、アンヌが「ダン!行かないで!」と叫んだ瞬間にかかるのが、まさにこの録音。音楽担当の冬木透氏がそれまでの常識を打ち破り、クラシック作品を子供向けの特撮ドラマで延々とかけました。それがあまりにも映像とマッチしていたため、ここからクラシック・ファンも多く生まれ、音源を突きとめた少年までいたことが『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』(青山通著・アルテスパブリッシング)に詳しく述べられています。冬木透氏は、不治の病のリパッティのあとのない切迫感が、素性を明かしM78星雲へ帰らねければならないダンの心境を表すのに、これ以上のものはないと選んだそうですが、まさに慧眼。
リパッティほど多くの讃辞につつまれたピアニストはすくない。彼のテクニックは超凡であったが、技巧のための技巧家ではなかった。むしろ、彼は、音楽が何を表現し何を聴衆に語らなければならないかという思索を重ねたひとである。彼のレパートリーはけしてせまいものではなかったが、とくに、バッハ、モーツァルト、シューベルト、シューマン、ショパンを得意としたが、ベートーヴェンなどもリサイタルではかなり弾いている。彼が一旦とりあげた曲に対しての表現の追及の厳しさは、たとえば、ベートーヴェンの「皇帝」協奏曲を弾くために4年がかりで研究と練習を積み、チャイコフスキーの協奏曲を弾くために3年を費やしたという話にその一端がうかがわれよう。
彼の演奏は考えぬかれ、磨き上げられて達成されたものである。リパッティはレコーディングが嫌いな方ではなかった。EMIの音楽部長として名演奏家の名レコードの数々を世に送ったウォルター・レッグはリパッティの回想記の中で、彼はむしろ、レコーディングを好んだし、そのために生のコンサートの録音についてもいつも好意的であった、と記している。のこされたリパッティのレコードの数がひじょうにすくないのは、彼の病身のせいでもあったのだ。このレコードのモーツァルトの協奏曲は演奏会録音である。しかし、彼の遺したレコードはいずれもが珠玉のような名演ばかりである。そこには、かつて、プーランクがリパッティを評した“神のような精神を持った芸術家”としてのリパッティの人格と芸術性が込められている。リパッティのレコードは、好楽家に対するまたとない遺産なのである。
数少ない、しかしいずれも宝石の輝きに似た貴重さを持つリパッティの遺産のうち、おそらく最も条件の整ったアルバムがこれ。リパッティのピアノは幅が大きく多様な表現の中に深い詩情を湛えている。その美しさは他に類を見ない。
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