『キリストの幼時』は、「マタイによる福音書第2章のヘロデ王の幼児大虐殺」と「聖家族のエジプトへの逃避行の物語」を題材にし、聖三部作(Trilogie sacrée)とベルリオーズが言わしめるオラトリオだが、ほんのふとしたことで、パーティーの席で座興から一気に書き上げられたわずか3分ほどのささやかな合唱曲(第2部第2曲『羊飼いの聖家族への別れ』の原型)がその発端。これを「パリの宮廷礼拝堂の楽長ピエール・デュクレが1679年に作曲した古風なオラトリオの断章」と称して発表し、ベルリオーズの名を伏せた。これが功を奏し、聴衆も批評家たちもこの触れ込みを疑わず、作品は好評を博した。後にベルリオーズは自分の作曲であると明かしたが、評価が覆ることはなかった。
だいたいね、ベルリオーズをエキセントリックでグロテスクなロマン派の化け物だといった、何か特別扱いする人が多すぎて困るよ。ベルリオーズは他の作曲家となんら変わることはないのに、美しい作品が多い。 ― サー・コリン・デイヴィス
リズムの冴えや管弦楽法にもまして目を見張るのが声楽の扱い。フランス語のテクストは、全曲を通じてベルリオーズ自身による。本来キリスト者ではないベルリオーズの手によってこうした聖書にまつわる内容の作品が書かれた点といい、なにもかもがおよそベルリオーズのイメージからは遠いようにもみえますが、様式や手法よりもリアルな表現そのものを重視する斬新さという点で、これはこれでまた鬼才ならではの特異な才能が開花したジャンルといえるのではないでしょうか。
最終的に演奏時間100分近くを要する大曲とはなったものの、『ファウストのごう罰』や『レクイエム』にみられた巨大な編成や激情に替わり、いたって簡潔で意識的に古風なスタイルが採用され、平穏と静けさが支配する音楽となっています。
ベルギー生まれで主にフランスで活躍した名匠アンドレ・クリュイタンスによるエクトル・ベルリオーズ作曲 聖三部作「キリストの幼時」全曲盤。ただ美しさだけではなく、王位簒奪に悩み赤子を皆殺しにしようとするヘロデのアリアでは狂気を
感じさせる場面もあり、エジプトへの逃避という余り取り上げられることのない物語を見事に音楽で表現したベルリオーズの認識を改めさせるにたる名盤、名曲だ。
歌手陣も素晴らしい歌唱を聴かせる。録音も良好で、人が去る場合は声が遠のいていったり、天使の合唱を後方で歌わせることで天からの呼びかけを表現したりなど遠近感をもたせた演出も凝っている。
ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス(ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テノール)
ロジェ・ソワイエ(バリトン)
クサヴィエ・デプラス(バス)、他
ルネ・デュクロ合唱団
パリ音楽院管弦楽団
アンドレ・クリュイタンス(指揮)
1965年11月、12月、1966年9月、ステレオ・セッション録音。
レコードサウンド/カテゴリ指定
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