「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、大編成の弦楽パートで演奏されたものです。ケンペの盤歴からいって、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、そしてリヒャルト・シュトラウス、ワーグナーが思い出されるのは致し方ないことです。そして、ケンペのモーツァルトというと、イメージを浮かべられる人は多くないのではないかと思います。と、同時にケンペが描くモーツァルトというのはどういうものなのかという興味を抱かせるに十分でした。
もちろん構成はしっかりとしていて、アンサンブルは極上です。どのようにしたら無理なくパートごとにフレーズを受け渡すことができるのか、どのようにしたら聴き手を飽きさせずに曲想によって変化をつけるのか、ひたすらインテンポです。しかしながら息が詰まるような窮屈さはなく、むしろ伸びやかな開放感と気品に満ちあふれています。ケンペのモーツァルト演奏で感じるのは横に流れるというよりは、縦に積み重ねる演奏だということです。ある意味で近代的とでも言えますが、数多くある名盤たちの中にあって、強い主張をするものではありません。
ケンペはライプチィヒ市立歌劇場でのオペラ指揮者としてキャリアを始めました。「フィガロの結婚」序曲からとても勢いのある演奏で、これから上演の幕が上がりそうな気持ちになります。「コシ・ファン・トゥッテ」序曲も主部に入ってからの、各パートが手に取るようにわかる木管の掛け合いが見事です。そして「魔笛」序曲はケンペが13歳の時に、ドレスデン国立歌劇場に連れていかれて初めて聴いたオペラであり、「心の底から震える」ほどの感動を得たとの逸話がある演目でもあり、音楽は一層充実した響きでありちょっとしたテンポの変化やニュアンスにも細かく目配りが効いています。一音一音がないがしろになっていない演奏です。そして興味深いことに、この「魔笛」の音楽づくりは、もったいぶらず、端正で颯爽としていて、ダイナミクスの設計、管楽器とのバランスなどはとても味わいが深いで、整えられた色彩が強い交響曲の第一楽章のようにも感じるから不思議です。
アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525, フィガロの結婚序曲, コシ・ファン・トゥッテ序曲, 魔笛序曲,1955年11月23-24日、12月4日、ロンドン、アビーロード第1スタジオ録音
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入手のメインルートは、英国とフランスのコレクターからですが、その膨大な在庫から厳選した1枚1枚を大切に扱い、専任のスタッフがオペラなどセット物含む登録商品全てを、英国 KEITH MONKS 社製マシンで洗浄し、当時の放送局グレードの機材で入念且つ客観的にグレーディングを行っております。明確な情報の中から「お客様には安心してお買い物して頂ける中古レコードショップ」をモットーに運営しております。